YAMAHA ZeaL & CBR600RR Motorcycle Garage

YZF-R3 リアアクスルシャフトの移植(P.E.O. ZERO POINT SHAFT+DOG HOUSE アクスルカラー)

サーキットで走らせてきた YZF-R25 のパーツを YZF-R3 へ移す記録のうち、足まわりです。移したのはリアのアクスルシャフトアクスルカラーです。

移植を終えたYZF-R3のリア周りを左後方から。DOG HOUSEのアクスルカラーとチェーン、リアホイール

リアアクスルシャフト(P.E.O. ZERO POINT SHAFT)

奈良の P.E.O.(ピー・イー・オー)が作るアクスルシャフトです。純正との違いは摩擦係数で、0.4μ に対して 0.2μとメーカーが数値で示しています。

純正のリアアクスルシャフト(上・金色)と、P.E.O. ZERO POINT SHAFT(下・黒)を並べた比較。全長はほぼ同じ
上が純正、下が ZERO POINT SHAFT。全長は同等
ZERO POINT SHAFTの軸に入ったレーザー刻印。ZERO POINT SHAFT、MADE IN NARA JAPAN、P.E.O.のロゴとQRコード
軸の刻印。MADE IN NARA JAPAN
純正シャフトとZERO POINT SHAFTの頭部と軸表面を寄って撮った比較。表面の仕上がりが違う
表面の仕上がりの差。上が純正

差の出どころは製法です。純正が旋削の工程で終わるところを、研削の工程まで回して表面粗さを下げているとメーカーは説明しています。材質は「機械構造用合金鋼(ISO 683-1、ISO 683-11 に準じる)」で、ベアリングと同じ系統の素材です。

この製品は「クロモリシャフト」ではありません。メーカーが公式のよくある質問で「一般的なクロームモリブデン鋼とは、異なります」と明記しています

項目 内容
メーカー P.E.O.(ピー・イー・オー)
製品名 ZERO POINT SHAFT_YZF-R25 /R3 リア
価格 22,000円(税込)
材質 機械構造用合金鋼(ISO 683-1、ISO 683-11 に準じる)
表面処理 防錆処理
摩擦係数 0.2μ(純正は 0.4μ)
特許 特許第5474149号
頭の二面幅 17mm(純正は 19mm)
納期 受注生産。在庫切れ時は60〜150日

※ 材質・摩擦係数・製法はメーカーの説明にもとづく。製品情報は P.E.O. 公式の商品ページ、材質と製法の説明は 製品紹介ページを参照

シャフトを換えると、使う工具が変わる

純正のシャフト頭は二面幅 19mm、ZERO POINT SHAFT は17mmです。外すときと組むときで当てる工具が違うので、作業には両方が要ります。この先この車体からリアホイールを外すのは 17mmで、19mm を持って行っても回りません。

頭の側から見ると、純正も ZERO POINT SHAFT も中空です。狙いが剛性でも重量でもなく摩擦なので、中空という基本構造は純正のままです。

純正リアアクスルシャフトの軸の太さをノギスで測っているところ。頭の側から中空構造が見える
純正シャフトの軸径を測る
ZERO POINT SHAFTの軸の太さをノギスで測っているところ。純正と同じく中空
ZERO POINT SHAFT も同じく中空

アクスルカラー(DOG HOUSE SUS強化)

アクスルカラーは、ホイールとスイングアームの間に入る筒です。純正のスチール製から、ステンレス製の強化品に交換しました。台湾の DOG HOUSE というブランドの製品で、国内は株式会社アトラスが扱っています。

DOG HOUSEのSUS強化リアアクスルカラー2個。左が小さいキャリパー側用、右が大きいスプロケット側用
2個セット。大きい方が左(スプロケット側)

左右は別の部品で、大きさが違います。大きい方が左のスプロケット側、小さい方が右のキャリパー側です。純正も左右で品番が分かれていて、スプロケット側が 1WD-F5386-00、ホイール側が 1WD-F5383-00 です。社外品には品番の刻印がないので、大きさで見分けます。

項目 内容
メーカー DOG HOUSE(取扱:株式会社アトラス)
製品名 YZF-R25 YZF-R3 MT-25 MT-03 SUS強化 リア アクスルカラーセット
品番 TA-DOG-AS012SI
価格 2,800円(税別)
材質 ステンレス
適合 YZF-R25/YZF-R3/MT-25/MT-03(2015-2025)
置き換える純正品番 1WD-F5386-00(スプロケット側)/1WD-F5383-00(ホイール側)

※ 品番・材質・適合・置き換える純正品番はメーカーの商品説明にもとづく。製品情報は アトラスの商品ページを参照

どれだけ違うのか、測って比べた

当たり面が広いことは、並べればひと目で分かります。どれだけ広いのか、そして他の寸法は純正と同じなのかを、組む前にノギスで確かめました。

左のスプロケット側、純正アクスルカラーの当たり面の外径をノギスで測っているところ
左・純正。外径 30mm
左のスプロケット側、DOG HOUSEのアクスルカラーの当たり面の外径をノギスで測っているところ
左・DOG HOUSE。外径 32mm
右のキャリパー側、純正アクスルカラーの当たり面の外径をノギスで測っているところ
右・純正。外径 30mm
右のキャリパー側、DOG HOUSEのアクスルカラーの当たり面の外径をノギスで測っているところ
右・DOG HOUSE。外径 35mm

違ったのは当たり面の外径だけでした。左のスプロケット側が 30mm から 32mm、右のキャリパー側が 30mm から 35mm。他の測定箇所(21.7〜21.8mm、14.5mm)は純正と同じです。メーカーが言う「断面積と接地面の厚みを増し、剛性アップ」が指していたのはここでした。

純正は左右とも 30mm ですが、DOG HOUSE は左右で広げ方が違います。ブレーキキャリパーがかかる右側が 5mm と大きめです。

左のスプロケット側アクスルカラー。純正(左・金色)とDOG HOUSE(右)を並べた比較。DOG HOUSEの方が当たり面が広い
左のスプロケット側。純正(左)と比べて当たり面が広い
右のキャリパー側アクスルカラー。純正(左・金色)とDOG HOUSE(右)を並べた比較
右のキャリパー側。こちらも同じ傾向

カラーはホイールのベアリングとスイングアームの間に挟まれ、アクスルナットを締めた力をそこで受け止めます。当たり面が広いほど、同じ力で締めても面にかかる圧力は下がります。接触しているところが局所的に潰れにくくなる、という理屈です。

取り外しと取り付け

リアスタンドで車体を上げ、アクスルナットを緩めてシャフトを抜きます。

YZF-R3のスイングアームからリアアクスルシャフトを抜いている途中
シャフトを抜く

このとき使っているのが TOSH-TEC(トシテック)のリアキャリパーサポートホルダーです。リアタイヤの交換時にキャリパーの脱落を防ぎ、ホイール交換を素早く確実に行うための補助ツールで、正体は車種専用の長さに作られた樹脂の棒です。メーカーは耐久レースでのタイヤ交換を用途に挙げています。

YZF-R3のスイングアームに差し込んだTOSH-TECのリアキャリパーサポートホルダー。黒い樹脂製の棒
リアキャリパーサポートホルダー(TOSH-TEC)

使い方はアクスルシャフトと入れ替えるだけです。シャフトを抜くときに反対側から押し込むと、この棒がキャリパーを保持するので、そのままホイールを外せます。組むときは逆に、アクスルシャフトを押し込めばホルダーが押し出されます

棒はクリップと紐でリアスタンドにつなぐので、押し出されても落ちません。樹脂製なのは車体側を傷つけないためです。

項目 内容
メーカー TOSH-TEC(トシテック)
製品名 リアキャリパーサポートホルダー
品番 TT-TOS00YR2000(YZF-R25/R3 用)
価格 2,640円(税込)
素材 樹脂
付属 脱落防止のクリップと紐
適合 YZF-R25/R3、CBR250R(MC41)、CBR250RR(MC51)、VTR250(MC33)、Ninja250/R、Ninja ZX-25R ※車種ごとに長さが違う専用設計

※ 品番・素材・適合・使い方はメーカーの商品説明にもとづく。製品情報は TOSH-TEC 公式の商品ページを参照

ホイールを外したら、カラーを入れ替えます。大きい方を左のスプロケット側へ、小さい方を右のキャリパー側へ入れます。

交換前。左のスプロケット側に入っている純正のアクスルカラー
左・交換前(純正)
交換後。左のスプロケット側に入ったDOG HOUSEのステンレス製アクスルカラー
左・交換後(DOG HOUSE)
交換前。右のキャリパー側に入っている純正のアクスルカラー
右・交換前(純正)
交換後。右のキャリパー側に入ったDOG HOUSEのステンレス製アクスルカラー
右・交換後(DOG HOUSE)

シャフトを差し込む前に、サービスマニュアルの指定どおりグリスを塗ります。使ったのはベルハンマーゴールド グリース No.2 です。

ZERO POINT SHAFTの軸にベルハンマーゴールドのグリースを塗っているところ
シャフトにグリスを塗る

締め付けは 57N·m

リアホイールアクスルナットの締付トルクは 57N·m、ナットの二面幅は 22mm です。締める順番はアクスルナットが先、チェーンアジャスターのロックナットが後になります。

設定目盛りのあるトルクレンチで、YZF-R3のリアアクスルナットを締めているところ
トルクレンチで 57N·m
使った工具。19mmと17mmのコンビネーションレンチ、22mmディープソケット、ラチェット、トルクレンチなど
使った工具一式。19mm と 17mm の両方を使う

本締めにはスタビレー(STAHLWILLE)のトルクレンチを使っています。締付トルクの一覧は YZF-R3 締付トルク一覧 にまとめています。

ナットは純正のまま。次は新品にする

ZERO POINT SHAFT にナットは付属しません。今回は純正を再使用しました。サーキットで走らせる車体なので、走行のたびに脱着して点検し、そのつどトルクをかけ直しています。

ただし、このナットはセルフロッキングナットです。締付トルクが受け持つのは締め付ける力、セルフロッキングが受け持つのはその力が抜けたあとの備えで、役割が別です。トルクを管理していることは再使用の理由になりません。脱着が多いことは、むしろ緩み止めの効きが落ちる側の事情です。

そのため次に外したときに新品へ交換します。セルフロッキングナットは新品交換が指定されている部品です。

規則では、ここは純正指定の部位

装備の基準として参考にしている JP-SPORT の技術仕様は、7-3-9-2 で「ホイール(フロント、リア)スピンドルシャフト、ナット、ワッシャーおよびディスタンスカラーは公認車両の状態を維持しなければならない」としています。アクスルシャフトの交換は、この条文の外側です。

アクスルカラーは、同じ条文の「ディスタンスカラー」と読むか、7-3-9-3 の「スペーサー(ベアリング外側左右)」と読むかで扱いが変わります。後者なら変更が認められ、材質も同規則がブレーキディスクを「鉄(SUS含む)」としている分類に収まります。

この車両はサーキットのスポーツ走行用で、レースの車検を通すために作っているわけではありません。規則との距離感は YZF-R3 移植パーツ にパーツごとの一覧でまとめています。

組んだあとはチェーンの調整

最後にチェーンを張り直します。チェーンプラーの刻み目盛りは見ていません。揃えたところで、チェーンが一直線になっている保証はないからです。

デイトナのチェーンアライメントツール(品番 72054)をスプロケットに当てて、実際のチェーンラインで合わせます。当てるには純正のチェーンガードが邪魔になりますが、ボルト2本で外れます

デイトナのチェーンアライメントツールをリアスプロケットとチェーンに当てて、まっすぐ通っているか確認しているところ
チェーンアライメントツールで確認

締付トルクは、アジャスティングナットが 1.5N·m、ロックナットが 16N·m です。

※ 製品情報は デイトナ公式の商品ページを参照

移植パーツの一覧と、系統ごとの進み具合は YZF-R3 移植パーツ にまとめています。同じリアまわりで先に移したのは ドライブチェーンガードとスタンドフック です。

YZF-R3 の記録は YAMAHA YZF-R3 資料 に、入手した経緯は YZF-R3 納車記 に、移植元の R25 との違いは YZF-R25 と YZF-R3 の違い にまとめています。