サーキットで走らせてきた YZF-R25 のパーツを YZF-R3 へ移す記録のうち、足まわりです。移したのはリアのアクスルシャフトとアクスルカラーです。

奈良の P.E.O.(ピー・イー・オー)が作るアクスルシャフトです。純正との違いは摩擦係数で、0.4μ に対して 0.2μとメーカーが数値で示しています。



差の出どころは製法です。純正が旋削の工程で終わるところを、研削の工程まで回して表面粗さを下げているとメーカーは説明しています。材質は「機械構造用合金鋼(ISO 683-1、ISO 683-11 に準じる)」で、ベアリングと同じ系統の素材です。
この製品は「クロモリシャフト」ではありません。メーカーが公式のよくある質問で「一般的なクロームモリブデン鋼とは、異なります」と明記しています。
| 項目 | 内容 |
| メーカー | P.E.O.(ピー・イー・オー) |
| 製品名 | ZERO POINT SHAFT_YZF-R25 /R3 リア |
| 価格 | 22,000円(税込) |
| 材質 | 機械構造用合金鋼(ISO 683-1、ISO 683-11 に準じる) |
| 表面処理 | 防錆処理 |
| 摩擦係数 | 0.2μ(純正は 0.4μ) |
| 特許 | 特許第5474149号 |
| 頭の二面幅 | 17mm(純正は 19mm) |
| 納期 | 受注生産。在庫切れ時は60〜150日 |
※ 材質・摩擦係数・製法はメーカーの説明にもとづく。製品情報は P.E.O. 公式の商品ページ、材質と製法の説明は 製品紹介ページを参照
純正のシャフト頭は二面幅 19mm、ZERO POINT SHAFT は17mmです。外すときと組むときで当てる工具が違うので、作業には両方が要ります。この先この車体からリアホイールを外すのは 17mmで、19mm を持って行っても回りません。
頭の側から見ると、純正も ZERO POINT SHAFT も中空です。狙いが剛性でも重量でもなく摩擦なので、中空という基本構造は純正のままです。


アクスルカラーは、ホイールとスイングアームの間に入る筒です。純正のスチール製から、ステンレス製の強化品に交換しました。台湾の DOG HOUSE というブランドの製品で、国内は株式会社アトラスが扱っています。

左右は別の部品で、大きさが違います。大きい方が左のスプロケット側、小さい方が右のキャリパー側です。純正も左右で品番が分かれていて、スプロケット側が 1WD-F5386-00、ホイール側が 1WD-F5383-00 です。社外品には品番の刻印がないので、大きさで見分けます。
| 項目 | 内容 |
| メーカー | DOG HOUSE(取扱:株式会社アトラス) |
| 製品名 | YZF-R25 YZF-R3 MT-25 MT-03 SUS強化 リア アクスルカラーセット |
| 品番 | TA-DOG-AS012SI |
| 価格 | 2,800円(税別) |
| 材質 | ステンレス |
| 適合 | YZF-R25/YZF-R3/MT-25/MT-03(2015-2025) |
| 置き換える純正品番 | 1WD-F5386-00(スプロケット側)/1WD-F5383-00(ホイール側) |
※ 品番・材質・適合・置き換える純正品番はメーカーの商品説明にもとづく。製品情報は アトラスの商品ページを参照
当たり面が広いことは、並べればひと目で分かります。どれだけ広いのか、そして他の寸法は純正と同じなのかを、組む前にノギスで確かめました。




違ったのは当たり面の外径だけでした。左のスプロケット側が 30mm から 32mm、右のキャリパー側が 30mm から 35mm。他の測定箇所(21.7〜21.8mm、14.5mm)は純正と同じです。メーカーが言う「断面積と接地面の厚みを増し、剛性アップ」が指していたのはここでした。
純正は左右とも 30mm ですが、DOG HOUSE は左右で広げ方が違います。ブレーキキャリパーがかかる右側が 5mm と大きめです。


カラーはホイールのベアリングとスイングアームの間に挟まれ、アクスルナットを締めた力をそこで受け止めます。当たり面が広いほど、同じ力で締めても面にかかる圧力は下がります。接触しているところが局所的に潰れにくくなる、という理屈です。
リアスタンドで車体を上げ、アクスルナットを緩めてシャフトを抜きます。

このとき使っているのが TOSH-TEC(トシテック)のリアキャリパーサポートホルダーです。リアタイヤの交換時にキャリパーの脱落を防ぎ、ホイール交換を素早く確実に行うための補助ツールで、正体は車種専用の長さに作られた樹脂の棒です。メーカーは耐久レースでのタイヤ交換を用途に挙げています。

使い方はアクスルシャフトと入れ替えるだけです。シャフトを抜くときに反対側から押し込むと、この棒がキャリパーを保持するので、そのままホイールを外せます。組むときは逆に、アクスルシャフトを押し込めばホルダーが押し出されます。
棒はクリップと紐でリアスタンドにつなぐので、押し出されても落ちません。樹脂製なのは車体側を傷つけないためです。
| 項目 | 内容 |
| メーカー | TOSH-TEC(トシテック) |
| 製品名 | リアキャリパーサポートホルダー |
| 品番 | TT-TOS00YR2000(YZF-R25/R3 用) |
| 価格 | 2,640円(税込) |
| 素材 | 樹脂 |
| 付属 | 脱落防止のクリップと紐 |
| 適合 | YZF-R25/R3、CBR250R(MC41)、CBR250RR(MC51)、VTR250(MC33)、Ninja250/R、Ninja ZX-25R ※車種ごとに長さが違う専用設計 |
※ 品番・素材・適合・使い方はメーカーの商品説明にもとづく。製品情報は TOSH-TEC 公式の商品ページを参照
ホイールを外したら、カラーを入れ替えます。大きい方を左のスプロケット側へ、小さい方を右のキャリパー側へ入れます。




シャフトを差し込む前に、サービスマニュアルの指定どおりグリスを塗ります。使ったのはベルハンマーゴールド グリース No.2 です。

リアホイールアクスルナットの締付トルクは 57N·m、ナットの二面幅は 22mm です。締める順番はアクスルナットが先、チェーンアジャスターのロックナットが後になります。


本締めにはスタビレー(STAHLWILLE)のトルクレンチを使っています。締付トルクの一覧は YZF-R3 締付トルク一覧 にまとめています。
ZERO POINT SHAFT にナットは付属しません。今回は純正を再使用しました。サーキットで走らせる車体なので、走行のたびに脱着して点検し、そのつどトルクをかけ直しています。
ただし、このナットはセルフロッキングナットです。締付トルクが受け持つのは締め付ける力、セルフロッキングが受け持つのはその力が抜けたあとの備えで、役割が別です。トルクを管理していることは再使用の理由になりません。脱着が多いことは、むしろ緩み止めの効きが落ちる側の事情です。
そのため次に外したときに新品へ交換します。セルフロッキングナットは新品交換が指定されている部品です。
装備の基準として参考にしている JP-SPORT の技術仕様は、7-3-9-2 で「ホイール(フロント、リア)スピンドルシャフト、ナット、ワッシャーおよびディスタンスカラーは公認車両の状態を維持しなければならない」としています。アクスルシャフトの交換は、この条文の外側です。
アクスルカラーは、同じ条文の「ディスタンスカラー」と読むか、7-3-9-3 の「スペーサー(ベアリング外側左右)」と読むかで扱いが変わります。後者なら変更が認められ、材質も同規則がブレーキディスクを「鉄(SUS含む)」としている分類に収まります。
この車両はサーキットのスポーツ走行用で、レースの車検を通すために作っているわけではありません。規則との距離感は YZF-R3 移植パーツ にパーツごとの一覧でまとめています。
最後にチェーンを張り直します。チェーンプラーの刻み目盛りは見ていません。揃えたところで、チェーンが一直線になっている保証はないからです。
デイトナのチェーンアライメントツール(品番 72054)をスプロケットに当てて、実際のチェーンラインで合わせます。当てるには純正のチェーンガードが邪魔になりますが、ボルト2本で外れます。

締付トルクは、アジャスティングナットが 1.5N·m、ロックナットが 16N·m です。
※ 製品情報は デイトナ公式の商品ページを参照
移植パーツの一覧と、系統ごとの進み具合は YZF-R3 移植パーツ にまとめています。同じリアまわりで先に移したのは ドライブチェーンガードとスタンドフック です。
YZF-R3 の記録は YAMAHA YZF-R3 資料 に、入手した経緯は YZF-R3 納車記 に、移植元の R25 との違いは YZF-R25 と YZF-R3 の違い にまとめています。