
YZF-R3・YZF-R25ともに、ニュートラルでエンジンをアイドリングさせていると、ミッションケースの右側あたりからカタカタと音がすることがあります。これは異音ではなく、ギアボックスの構造上どうしても出る音で、多くのバイクに共通する既知の現象です。原因と、本当の異音との見分け方をまとめます。

ニュートラルに入れ、クラッチレバーを離してエンジンをアイドリングさせていると音が出ます。クラッチレバーを握るとミッション内のシャフトの回転が止まり、音もすぐに止まります。
| 状態 | 音 |
| ニュートラル・クラッチレバーを離した状態(アイドリング) | カタカタと鳴る |
| ニュートラル・クラッチレバーを握った状態 | 止まる |
このガレージのYZF-R3(320cc)とYZF-R25(250cc)は、内径・行程や圧縮比が異なる別エンジンですが、どちらもニュートラルでのアイドリング中にこの音を確認しています。排気量の異なる2台で同じ症状が出ていることから、特定の個体の不具合ではなく、両車が共有するギアボックスの設計に起因する現象と考えられます。

この現象について、Yamaha公式の説明は見つかりませんでした。r3-forums.comでは、2017年式YZF-R3オーナーのKevinW 2017R3氏が2022年3月、この音を含む「壊れたと思いがちだが実は正常な挙動」をまとめた投稿で、次のように説明しています。
要約: ニュートラルでもメインシャフトとレイシャフトの複数のギアペアは常に噛み合って回転している。走行中と違ってギアに荷重がかかっていないため、エンジンのアイドリング振動でギア同士の遊び(バックラッシュ)がカタカタと鳴る。クラッチ板そのものが鳴っているわけではなく、ギアボックスの構造上正常な音で、これによる損傷はない。
この投稿には、2022年から2024年にかけて複数のオーナーから反応が寄せられています。2022年式YZF-R3(60周年記念カラー)を購入したmixmastermaughan氏は2024年1月、「レバーを握っていない状態の方が、レバーを握ってクラッチを切った状態より明らかにガシャガシャ音が大きい。輸送中に何かあったのではと心配していたが、この説明で納得できた」と、自身の車両でも同じ症状を確認したと投稿しています。
ニュートラルでのギアの遊び音は、Yamaha・YZF-R3固有の現象ではありません。Harley-Davidsonは2011年8月31日付でディーラー向け公式サービスブレティン「M-1304(Big Twin Neutral Rattle)」を発行し、2007年以降のTouring・Dyna・Softail・Twin Cam搭載CVOの全モデルを対象に、次のように案内しています。
要約: ニュートラルでアイドリング中に、ミッションケース右側からラトル音(カタカタ音)がすることがある。これは正常な状態で「ニュートラルラトル」と呼ぶ。1速目のギアペアの製造公差の積み重ね(バックラッシュ)が原因で、部品が個々に規格内であっても組み合わせにより遊びが生じ、歯面が当たって音が出る。正常な状態のため、ディーラーが修理を試みる必要はない。
YZF-R3・YZF-R25とHarley-Davidsonでは変速機の構造が異なりますが、「常時噛み合い式のギアボックスで、無負荷のギアペアにバックラッシュがあるとアイドリング振動で音が出る」という原理は共通しています。メーカーが公式に「正常」と文書化している点は、KevinW氏の説明を裏付ける材料になります。
Harley-Davidsonのサービスブレティンが案内する確認方法は、クラッチレバーを10〜15秒ほど握り続けて音が止まるかを見ることです。この記事のYZF-R3でも、ニュートラルでクラッチレバーを握ると音は止まることを確認しています。

ニュートラルでクラッチレバーを握っても音が止まらない場合は、この記事で扱うニュートラルラトルとは別の原因が考えられます。ミッションオイルの量・劣化や、クラッチ機構そのものの点検が必要です。
※ KevinW 2017R3氏の投稿・mixmastermaughan氏の投稿はr3-forums.com「Things you might think are wrong, but aren't」スレッド(2022年3月開始)による。Harley-Davidson公式サービスブレティンM-1304はsportsterpedia.com掲載のPDF(2011年8月31日付)で原文を確認した。