YZF-R3 フロントブレーキをレース仕様に交換(サンスター プレミアムレーシング+ベスラ+Nプロジェクト)

YZF-R3 をサーキットのスポーツ走行に仕立てていく記録のうち、ブレーキ系です。ディスクローターとパッドピンは、YZF-R25で使っていたものをYZF-R3へ移設しました。ブレーキパッドとローターの固定ボルトは新品で用意しています。

交換後のYZF-R3フロント周りを側面から。金色の純正キャリパーとサンスターのフローティングディスクローター。フローティングピンが黒色

サンスター プレミアムレーシング フロントディスクローター

ローターはサンスター プレミアムレーシング(品番ET403)のフローティングタイプに交換しました。アウターローター(摩擦面)とインナーローター(キャリア)を別部品にして、ピンで浮動状態に組む構造です。表面はホール&スリット加工です。

項目 内容
メーカー サンスター(SUNSTAR)
シリーズ・品番 プレミアムレーシング ET403
外径 298mm
板厚 4.5mm
パッド当たり幅 35mm
構造 フローティングピン式(ホール&スリットタイプ)
メーカー希望小売価格 46,200円(税込)

※ 品番・寸法・価格はメーカーの商品説明にもとづく。価格は2026年7月時点のもので、将来変動する可能性があります。製品情報は サンスター公式の商品ページを参照

実測では、純正新品時とほぼ同じ厚さだった

カタログの寸法が実物とどれだけ合っているか、外した純正ローターと並べてノギスで確かめました。

サンスター プレミアムレーシング(左)と外した純正フロントディスクローター(右)を並べた比較。インナーローターの形状が異なる
左がサンスター、右が純正
純正ローターの板厚をノギスで測定。4.63mm
純正の板厚 4.63mm
サンスターローターの板厚をノギスで測定。4.60mm
サンスターの板厚 4.60mm

板厚は純正4.63mmに対しサンスター4.60mmで、実質同じです。サービスマニュアルの純正新品時スペック(298.0mm×4.5mm)とも近い値でした。

純正ローターのパッド接触幅をノギスで測定。37.24mm
純正のパッド接触幅 37.24mm
サンスターローターのパッド接触幅をノギスで測定。35.00mm
サンスターのパッド接触幅 35.00mm

一方で、パッドが当たる部分の幅だけは、純正37.24mmに対しサンスター35.00mmと2.24mm狭くなっていました。サンスターのカタログにある「パッド幅35mm」と実測値がそのまま一致します。板厚はほぼ変えず、接触面積だけを絞って軽量化してある設計だと分かります。

外観では、フローティングピンの色で純正とサンスターを見分けられます。純正はリベットが銀色、サンスターは黒色です。インナーローター(キャリア)の形状も違います

キャリアはアルミ、摩擦面は鉄・SUS系

部位 サンスターET403 純正
フローティングピン 黒アルマイト(アルミ)
インナーローター(キャリア) 黒アルマイト(アルミ) 磁石が付く(鉄系)
アウターローター(摩擦面) 磁石が付く(鉄・SUS系)。メーカーはディスク専用のステンレス素材と説明(グレード非公開)

※ 部位ごとの材質は同梱パンフレットと磁石で確認。摩擦面の素材説明はサンスターエンジニアリング公式サイトを参照

キャリア部は純正の鉄系から、サンスターではアルミ(アルマイト仕上げ)に変わっています

ブレーキパッドはレース専用(ベスラ VD-289WX)

パッドはベスラ(Vesrah)Racing WXシリーズ VD-289WXに交換しました。パッケージには「この商品はレース専用のため、公道での使用はできません」と明記されています。

ベスラ Racing WX VD-289WXのパッケージ。レース専用・公道使用不可の注意書きと適合車種一覧
レース専用の注意書きが明記されている
外した純正ブレーキパッド(上)とベスラ VD-289WX(下)を並べた比較
上が純正、下がベスラ
純正パッド(上)とベスラ(下)のバックプレート側の比較
バックプレート側の比較
項目 内容
メーカー ベスラ(Vesrah)Racing WXシリーズ
品番 VD-289WX
JAN 4544540040400
適合(パッケージ表記) YZF-R25(14-20)/YZF-R3(15-20)/MT-03(15-20)/X-MAX250(16-20)/MT-25(15-17)
製造 日本製
販売元 タカラ株式会社

※ 適合・製造・販売元はパッケージ記載にもとづく。製品情報は ベスラの商品ページを参照

外した純正パッドは、公道での慣らし走行の時点でほとんど減っていませんでした。

パッドピンは純正からNプロジェクト Nt-TYPEへ

パッドを固定するパッドピンも、純正からNプロジェクト Nt-TYPE(チタンナイトライド仕上げ)に交換しました。

純正パッドピン(上・黒ずんだ鋼材)とNプロジェクト Nt-TYPE(下・チタンナイトライド仕上げの金色)を並べた比較。どちらも同じ形のヘアピン状クリップが両端に付く
上が純正、下がNプロジェクト Nt-TYPE

純正・Nプロジェクトとも、両端をベータピン(ヘアピン状のクリップ)で固定する、同じ方式です。素材と表面処理が違うだけの、直接交換品でした。

βピンをワイヤーロックした

MFJ国内競技規則の JP-SPORT技術仕様 7-3-7-7は「ブレーキパッド脱落防止のためにβピン付きのパッドピンを使っている場合は、βピンにワイヤーロックをしなければならない」としています。この条文にしたがい、両端2本のβピンを1本のワイヤーでまとめて結線しました。

パッドピン両端のベータピンを1本のワイヤーでまとめて結線した状態
両端のβピンをまとめて結線
ワイヤーロックに使った工具。DIZZY CLUBのステンレスワイヤー、ワイヤーツイスター、KNIPEXニッパー、小さめのラジオペンチ
使った線材・工具一式

片側だけの結線では、反対側のβピンが緩んだ場合にピンが抜ける方向を塞げません。線材はDIZZY CLUB ステンレスワイヤー(線径0.57mm)です。規則に線径の指定はありませんが、一般的なロックワイヤーの汎用サイズ(0.51〜0.81mmの範囲)に収まる太さを選びました。工具はワイヤーツイスター(自己撚り式)・KNIPEXニッパー・小さめのラジオペンチ(ワイヤー後端を丸めるために使用)です。

ローター固定ボルトも新品(K-PIT)に交換

ローターを留めるボルトも、キタコ(KITACO)のK-PITブランドで新品に交換しました。

K-PITのローターボルト新品パッケージ3点。3本入りが1個、1本売りが2個
K-PIT ローターボルト(新品)
項目 内容
メーカー キタコ(KITACO)K-PIT
サイズ M8×25 P1.25・ヤマハタイプ(純正同等品)
品番・数量 70-500-73101(3本入り)× 1/70-500-73001(1本売り)× 2
合計本数 5本

※ 品番・サイズはメーカーの商品説明にもとづく。製品情報は キタコ公式の商品ページを参照

ボルトが1本だけ外れず、炙って外した

純正ボルトを外すとき、1本だけ固着して外れませんでした。バーナーで炙って加熱し、ネジロック剤を軟化させてから外しました。

固着したローターボルトをバーナーで炙って加熱しているところ
バーナーで炙って加熱

ネジロック剤がしっかり効いていたことの裏付けでもあります。

ネジロック剤は赤(LOCTITE)で組み直した

外した純正ボルトのネジ穴に、赤いネジロック剤の残りが確認できました。サービスマニュアルには色や強度の指定はなく「ネジロック」とだけ書かれていますが、実際に使われていたのは赤だったため、同じ赤(LOCTITE)で組み直しました。

ネジ穴に残った赤いネジロック剤の跡
ネジ穴に赤い残り
M8 P1.25のタップでボルト穴のネジ山をさらっているところ
タップでネジ穴をさらう
新品ボルトに赤いLOCTITEのネジロック剤を塗布しているところ
新品ボルトに赤いLOCTITEを塗布

作業の順番は、古いネジロックの残渣をネジ穴から除去し、M8 P1.25のタップでネジ穴をさらってから、新品ボルトに赤いネジロックを塗布して締め付けています。

締め付けは23N·m、対角線上に数回に分けて

フロントブレーキディスクボルトの締付トルクは23N·mです。サービスマニュアルはネジロック指定に加え、数回に分けて対角線上に締め付けること、ディスクは面取り側が内側を向くように取り付けることを指定しています。

トルクレンチでフロントブレーキディスクボルトを23N·mで締め付けているところ
ディスクボルト 23N·m
トルクレンチでフロントブレーキキャリパーボルトを35N·mで締め付けているところ
キャリパーボルト 35N·m
使用した工具一式。スタビレーのトルクレンチ、デジタル式トルクレンチ、ラチェット、インパクトレンチ、SOTOバーナー、タップなど
使用工具一式

キャリパーはフロントタイヤの脱着で干渉するため、事前に外して保持しています。締付トルクの一覧は YZF-R3 締付トルク一覧 にまとめています。

フロントアクスルナットも純正を再使用

ローター交換にはフロントホイールの脱着が伴うため、フロントアクスルナットも外して締め直しています。今回は純正を再使用しました。

フロントアクスルシャフトをホイールハブへ挿入しているところ
アクスルシャフトを挿入
トルクレンチでフロントアクスルナットを締め付けているところ
アクスルナットをトルク管理

このナットはセルフロッキングナットです。締付トルクが受け持つのは締め付ける力です。セルフロッキングが受け持つのは、その力が抜けたあとの備えです。トルクを管理していることは再使用の理由になりません。そのため次に外したときに新品へ交換します

規則はどこまで一致するか

装備の基準として参考にしている MFJ国内競技規則2026 付則11「JP-SPORT技術仕様」には、7-3-7「ブレーキ」という節があります。ここは「レースのために変更、改造、チューニングが許可される部分」の節にあり、フロントアクスル(規則の外側)とは扱いが異なります。

パーツ 条文 規則側の扱い
ブレーキディスク(ローター) 7-3-7-4 変更可。ただし外径・ベンチレーションシステムは公認時のまま維持。インターナルベンチレイテッドディスクは不可
ブレーキディスクの材質 7-3-7-5 交換品は鉄(SUS含む)のみ認められる
ブレーキパッド 7-3-7-1 前後とも変更可
パッドピン(βピン) 7-3-7-7 交換可。ただしβピンにワイヤーロックが必要
ブレーキキャリパー・マスターシリンダー 7-3-7-6 公認時のまま(変更不可)

規則の用語「βピン」は、この記事で使っている「ベータピン」と同じものです。パッドピンの交換自体は規則が明文で許可しており、フロントアクスル(規則の外側)とは対照的です。

材質については、キャリア部が純正の鉄系からアルミに変わっている点が、7-3-7-5「鉄(SUS含む)のみ」の読み方に関わります。摩擦面だけを指すのか、キャリアを含むディスク全体を指すのかは条文上明確でなく、読みが分かれます。適合・不適合と断定できる材料ではないため、事実と条文の関係だけをここに書いています。

この車両はサーキットのスポーツ走行用で、レースの車検を通すために作っているわけではありません。規則をどこまで参考にしているかは YZF-R3 移植パーツ にパーツごとの一覧でまとめています。

※ 条文は MFJ 国内競技規則 2026 付則11 JP-SPORT技術仕様(PDF)を参照

移植パーツの一覧と、系統ごとの進み具合は YZF-R3 移植パーツ にまとめています。YZF-R3 の記録は YAMAHA YZF-R3 資料 に、入手した経緯は YZF-R3 納車記 にまとめています。