YZF-R3 フロントアクスルシャフトの移植(KOOD クロモリ+DOG HOUSE アクスルカラー)

サーキットのスポーツ走行で使っていた YZF-R25 のパーツを YZF-R3 へ移設する記録のうち、足まわりです。移したのはフロントのアクスルシャフトアクスルカラーです。

移植を終えたYZF-R3のフロント周りを右斜め前から。ブレーキディスク、ABSセンサーローター、アクスルナット

フロントアクスルシャフト(KOOD クロモリ)

KOOD(クード)が作るアクスルシャフトです。材質は日本製のクロームモリブデン鋼で、剛性と精度を掲げています。

純正のフロントアクスルシャフト(上)とKOODクロモリアクスルシャフト(下)を並べた比較。全長はほぼ同じ
上が純正、下が KOOD。全長は同等
KOOD(左・KOOD/YF4刻印)と純正(右)のシャフト頭を並べた比較。KOODの六角の方が大きい
左が KOOD(刻印 KOOD/YF4)、右が純正

製法は、生材から熱を入れてひずみをプレスで直し、もう一度熱を入れます。そのうえでセンターレス研磨と3層メッキで仕上げます。開発は、KOOD を作る金属製品製造コウワの社長が、バイク仲間の「高精度なクロモリシャフトが欲しい」という求めに応えたのが始まりです。

項目 内容
メーカー KOOD(クード/金属製品製造コウワ)
品番 Y-F-004
材質 日本製クロームモリブデン鋼
表面処理 3層メッキ/センターレス研磨
頭の二面幅 19mm(純正は 17mm)
メーカー希望小売価格 38,500円(税込)
適合 2015年〜 YZF-R25/YZF-R3/MT-25/MT-03

※ 材質・製法・価格・適合はメーカーの商品説明にもとづく。価格は2026年7月時点のもので、将来変動する可能性があります。製品情報は KOOD 公式ショップの商品ページを参照

KOOD と P.E.O. は、狙っているものが逆

前後で入れた2社は、目指すものが違います。フロントの KOOD は剛性と精度、リアの P.E.O. は摩擦の低減(摩擦係数を 0.4μ から 0.2μ へ)です。1台の前後で、別の考え方の製品を使っています。

KOOD も純正も中空です。剛性を狙う社外シャフトでも、中空という基本構造は純正のままです。リア(P.E.O.)でも純正・社外とも中空でした。

KOODシャフトの頭を正面から。中央が中空で、穴の奥まで暗く見える。KOOD/YF4の刻印
KOOD。中央が中空
純正フロントアクスルシャフトの頭を正面から。中空構造
純正。こちらも中空

シャフトを換えると、使う工具が変わる

シャフト頭の二面幅は、純正17mm に対し KOOD は19mmです。締結するアクスルナット側も19mmなので、KOODにするとシャフト頭とナットが両方19mmで揃います

アクスルカラー(DOG HOUSE SUS強化)

アクスルカラーは、ホイールとフォークの間に入る筒です。純正から、ステンレス製の強化品に交換しました。台湾の DOG HOUSE というブランドの製品で、国内は株式会社アトラスが扱っています。

DOG HOUSEのSUS強化フロントアクスルカラー2個と純正カラー2個を並べた比較。DOG HOUSEはテーパー形状
手前が DOG HOUSE(テーパー形状)、奥が純正

フロントのカラーは左右共通の1部品です。純正の置き換え品番も1つ(1PA-F5386-00)です。リア(リアアクスル)のカラーは左右で別部品で、大小を見分ける必要がありましたが、フロントはその区別が要りません。DOG HOUSE はテーパー形状で、外径が広い側が外に来る向きで組みます。

項目 内容
メーカー DOG HOUSE(取扱:株式会社アトラス)
製品名 XSR125 YZF-R25 YZF-R3 MT-25 MT-03 SUS強化 フロント アクスルカラーセット
品番 TA-DOG-AS011SI
価格 2,800円(税別)
材質 ステンレス
適合 XSR125/YZF-R25/YZF-R3/MT-25/MT-03(2015-2025)
置き換える純正品番 1PA-F5386-00(左右共通)

※ 品番・価格・材質・適合・置き換える純正品番はメーカーの商品説明にもとづく。価格は2026年7月時点のもので、将来変動する可能性があります。製品情報は アトラスの商品ページを参照

どれだけ違うのか、測って比べた

メーカーは「断面積と接地面の厚みを増し、剛性とステアリングフィールを狙う」と説明しています。実物のどこが純正と違うのかを、組む前にノギスで確かめました。

純正フロントアクスルカラーの当たり面の外径をノギスで測っているところ。25.97mm
純正。当たり面の外径 25.97mm
DOG HOUSEフロントアクスルカラーの当たり面の外径をノギスで測っているところ。27.99mm
DOG HOUSE。当たり面の外径 27.99mm
純正フロントアクスルカラーの全長をノギスで測っているところ。19.11mm
純正。全長 19.11mm
DOG HOUSEフロントアクスルカラーの全長をノギスで測っているところ。19.03mm
DOG HOUSE。全長 19.03mm

違ったのは当たり面の外径だけでした。純正の 25.97mm から 27.99mm へ、2mm ほど広がっています。全長は純正 19.11mm に対して DOG HOUSE 19.03mm で、ほぼ同じです。純正と置き換わる寸法は保ったまま、当たり面だけを広げてあります。リア(当たり面が 30mm から 35mm)と同じ考え方の製品です。

カラーはホイールのベアリングとフォークの間に挟まれ、アクスルナットを締めた力をそこで受け止めます。当たり面が広いほど、同じ力で締めても面圧が下がり、接触部が変形しにくくなります。メーカーが「剛性とステアリングフィール」を挙げているのは、この締結部の変形の少なさを指していると読めます。

アクスルがすんなり入らず、フォークの芯を出し直した

移植のとき、フロントアクスルがすんなり入りませんでした。シャフトの先端が反対側のカラーに対して高さがずれて、まっすぐ通らない状態です。

フロントアクスルシャフトの先端が、反対側のカラーの穴に対して高さがずれて入らない状態
先端の高さがずれて、まっすぐ入らない

順に切り分けました。フロントフェンダーの締め付けでフォークの間隔がずれることがあるので、まずフェンダーを緩めました。これでは直りませんでした。

フロントフェンダーの締め付けボルトをビットドライバーで緩めているところ
フェンダーの締め付けを緩める
フロントフェンダーの締め付けボルトを別角度から緩めているところ
別角度から

次に、左右のフォークを固定しているアンダーブラケットとトップブリッジのピンチボルトを緩めました。フォークが動ける状態にしてアクスルを通し、通した状態でブラケットを締め直して、フォークの芯を出します。

アンダーブラケットのピンチボルトをラチェットで緩めているところ
ブラケットのピンチボルトを緩める
芯出し後、フロントアクスルシャフトがまっすぐカラーに通った状態
芯が出て、まっすぐ通った

アクスルが渋いとき、原因はシャフトやカラーではなく、左右フォークの平行が出ていないことがあります。フェンダーだけでなくアンダーブラケット・トップブリッジまで緩め、アクスルを基準に芯を出し直すと通ります。

取り外しと取り付け

フロントタイヤの脱着ではキャリパーが干渉するので、先に外しておきました。

キャリパーを外したYZF-R3のフロント。ブレーキディスクとABSセンサーローターが見える
キャリパーは事前に外す

外したキャリパーは、ブレーキホースに余計な力がかからないよう、フックでフロントアップスタンドに掛けて保持しました。

シャフトを差し込む前に、サービスマニュアルの指定どおりグリスを塗ります。使ったのはベルハンマーゴールド グリース No.2 で、リアと同じ銘柄です。

KOODシャフトの軸にベルハンマーゴールドのグリースを塗っているところ
シャフトにグリスを塗る

締め付けは 52N·m

フロントホイールアクスルナットの締付トルクは 52N·m、ナットの二面幅は 19mm です。芯を出したあと、緩めたブラケットも規定トルクで締め直します。

設定目盛りのあるトルクレンチで、YZF-R3のフロントアクスルナットを締めているところ
トルクレンチで 52N·m
トルクレンチでアンダーブラケットのピンチボルトを締め直しているところ
アンダーブラケットも締め直す
目盛り付きトルクレンチでトップブリッジのピンチボルトを締め直しているところ
トップブリッジも締め直す
使った工具。19mmと17mmのコンビネーションレンチ、ソケット、ラチェット、トルクレンチなど
使った工具一式。19mm と 17mm の両方を使う

本締めにはスタビレー(STAHLWILLE)のトルクレンチを使っています。締付トルクの一覧は YZF-R3 締付トルク一覧 にまとめています。

規則では、ここは純正指定の部位

装備の基準として参考にしている JP-SPORT の技術仕様は、7-3-9-2 で「ホイール(フロント、リア)スピンドルシャフト、ナット、ワッシャーおよびディスタンスカラーは公認車両の状態を維持しなければならない」としています。アクスルシャフトの交換は、この条文の外側です。

アクスルカラーは、同じ条文の「ディスタンスカラー」と読むか、7-3-9-3 の「スペーサー(ベアリング外側左右)」と読むかで扱いが変わります。後者なら変更が認められ、材質も同規則がブレーキディスクを「鉄(SUS含む)」としている分類に収まります。

この車両はサーキットのスポーツ走行用で、レースの車検を通すために作っているわけではありません。規則をどこまで参考にしているかは YZF-R3 移植パーツ にパーツごとの一覧でまとめています。

移植パーツの一覧と、系統ごとの進み具合は YZF-R3 移植パーツ にまとめています。同じ足まわりで先に移したのは リアアクスルシャフトとアクスルカラー です。

YZF-R3 の記録は YAMAHA YZF-R3 資料 に、入手した経緯は YZF-R3 納車記 に、移植元の R25 との違いは YZF-R25 と YZF-R3 の違い にまとめています。