YZF-R3 NAGバルブ(NAG S.E.D 内圧コントロールバルブ)

YZF-R3 のカスタム記録のうち、吸気・燃調・点火系です。エアクリーナーやサブコン、点火プラグなど吸気・燃調・点火にかかわる系統で、最初に手を付けたのがNAGバルブです。YZF-R25で使用実績のある部品を、R3へ移植しました。

NAGバルブ(NAG S.E.D 内圧コントロールバルブ)

NAG S.E.D(ナグ・エスイーディ)のNAGバルブを、R25からR3へ移植しました。クランクケース内で発生するブローバイガスの逆流を防ぐワンウェイバルブで、クランクケースブリーザーホースに割り込ませて使います。専用のホースは用意せず、純正のクランクケースブリーザーホースを適切な長さに切り分け、バルブの両端をステンレス製ホースバンドで固定しました。

NAGバルブ本体と、純正クランクケースブリーザーホースを切り分けた2本のホース、ホースバンド4個。作業台の上に並べた状態
加工後の状態。純正ホースを切り分けてバルブの両端に接続
純正のクランクケースブリーザーホース単体(下)と、NAGバルブを組み込んだホース(上)の比較
純正ホース(下)とNAGバルブを組み込んだ状態(上)
項目 内容
メーカー NAG S.E.D(株式会社ナグ・エスイーディ/岐阜県各務原市)
製品名 NAGバルブ
機能 クランクケース内圧の逆流を防ぐワンウェイバルブ
取り付け方法 クランクケースブリーザーホースへボルトオン感覚で割り込ませる。メーカーはナイロンストラップでの固定を推奨(今回はステンレス製ホースバンドを使用)
適合 NAG S.E.D の通販サイトにYZF-R25専用モデル(口径φ12・33,000円)の掲載を確認。R3への適合表記はないが、R25で使用実績あり

※ メーカー・機能・取り付け方法はメーカーの商品説明にもとづく。製品情報は NAG S.E.D公式サイトの製品ページ、口径・価格はNAG S.E.D通販サイトの商品ページを参照

装着する理由

YZF-R25・YZF-R3はスリッパークラッチを持たず、減速時のエンジンブレーキがよく効きます。効きすぎてリアタイヤがロックすることもあります。メーカーはNAGバルブの効果として、エンジンレスポンスの向上・振動の低減・燃費の改善・加速性能の向上、そしてエンジンブレーキの軽減を挙げています。このうちエンジンブレーキの軽減が、R25で使ってきたこのバルブをR3へ移植する動機です。

逆向き取り付けを防ぐ方向マーカー

NAGバルブは向きのあるワンウェイバルブです。逆向きに取り付けるとクランクケース内圧が正常に抜けなくなり、トラブルにつながります。本体には取り付け方向を示す「↑」の刻印があり、今回の実車でも確認します。取り付け時はこの矢印が見える向きで確実に装着します。

車体に取り付けたNAGバルブ。本体に白く「↑」の方向マーカーが見える
取り付け完了。本体に白い「↑」マーカーが見える

規則との距離感

MFJ 国内競技規則 2026年度 付則11「JP-SPORT技術仕様」7-2-4-1(クローズドブリーザーシステム)は、次のように定めています。

オイルブリーザーラインはエアクリーナーボックスまたはエアクリーナーボックスおよびオイルキャッチタンクに連結され、これに排出される構造となっていること。オイルブリーザーラインに逆止弁(ワンウェイバルブ)を追加することは禁止される。

NAGバルブはメーカー自身が「ワンウェイバルブ」と説明する製品で、この条文の禁止対象に該当します。この禁止条文は2020年度に新設されたもので、2019年度以前のJP250付則11には存在しません。

一方、このR3が実際に走る筑波サーキットの「スポーツ走行」(Cクラス等・非競技の走行会)の車両規定には、この禁止事項の記載がありません。禁止しているのは、筑波ロードレース選手権シリーズ・筑波ツーリスト・トロフィー(競技・レース区分)が共通で使う「筑波サーキット技術仕様」で、こちらはMFJと同一の文言で禁止を明記しています。

つまり「レースに出るかどうか」が禁止の境界線です。このR3はサーキットのスポーツ走行ができる車両づくりを目的にしていて、レース車検を通すための車両ではありません。そのため、他の移植パーツ(フロントアクスルシャフトなど)と同じく、JP-SPORT規則の外側にあるパーツとして装着しています。

※ 条文は MFJ 国内競技規則 2026 付則11 JP-SPORT技術仕様(PDF)、筑波サーキットのスポーツ走行車両規定は公式Cクラス車両規定(PDF)を参照

フューエルタンクの脱着

NAGバルブはクランクケースブリーザーホースに接続します。このホースへたどり着くには、シート・サイドパネル・フューエルタンクカバーを外したうえで(フューエルタンクカバーの外し方参照)、フューエルタンク本体を浮かせた後に、ホース、コネクターを外す必要があります。

フューエルタンクカバーを外した状態のYZF-R3。作業開始時の車体全体
作業開始。タンクカバーを外した状態
フューエルタンクを浮かせた状態。ホース3本とコネクター1本がタンク側とつながっているのが見える
タンクを浮かせ、ホースとコネクターの接続を確認

フロント・リヤのフューエルタンクブラケットボルト(フレーム側・前後計4本)を外すと、タンクを浮かせられます。締付トルクは前後とも12N·mです(締付トルクデータ参照)。タンクを浮かせた状態で、フューエルタンクブリーザーホース・オーバーフローホース・フューエルホースの3本と、フューエルポンプカプラー(コネクター)を外します。フューエルホースは工具不要で外せます。ホース内に溜まったガソリンが漏れるため、接続部を布で覆って作業します。フューエルタンクブリーザーホース(燃料気化ガス側)は、NAGバルブの接続先であるクランクケースブリーザーホースとは別系統です。外したタンクは、フューエルポンプなどがある下面が直接地面に触れないよう気をつけて置きます。

エアクリーナーボックスの脱着

クランクケースブリーザーホースの接続先であるエアクリーナーボックスを外します。左右のケース固定ボルト(M6・7N·m)と、スロットルボディへつながるインシュレーター(ジョイント)の固定クランプスクリュー(M5・2.5N·m、左右2箇所)を緩めます(締付トルクデータ参照)。

エアクリーナーボックスの左固定ボルトの位置を黄色い丸で示した写真
エアクリーナーボックスの固定ボルト位置
左側のインシュレーター固定クランプスクリュー。手前の部品の隙間から覗き込むように奥のボルトヘッドが見える
左側のクランプスクリューは、隙間からピンポイントでアクセス
エアクリーナーボックスを浮かせた状態。スロットルボディと、外れた純正のクランクケースブリーザーホースが見える
ボックスを浮かせると、スロットルボディとホースが見える

【左側のみ】クーラントのリザーバータンクを外す

左側でNAGバルブを挿入するには、クーラントのリザーバータンクを外す必要があります。外さないと、ホースを確実に挿入できる隙間ができません。

クーラントのリザーバータンク付近。フレームとタンクの間に、NAGバルブ挿入用の隙間を確保するスペースがある
左側はリザーバータンクを外して隙間を確保

バルブの取り付けと本締め

スロットルボディとシリンダーヘッドカバーの間の狭い場所に、加工したバルブを組み込みます。「↑」マーカーが見える向きで接続し、ホースバンドで固定します。

スロットルボディとシリンダーヘッドカバーの間にNAGバルブを取り付けている途中
取り付け開始
トルクレンチでフューエルタンクのブラケットボルトを締めているところ
フューエルタンクを戻し、12N·mで本締め

取り付けが終わったら、エアクリーナーボックス・フューエルタンクを外した手順の逆で戻します。フューエルタンクのブラケットボルトは前後とも12N·mで本締めします。

使用した工具一式。ロングマイナスドライバー、トルクレンチ、KTCコードレスラチェット、ヘックスビット、ソケット2種、プライヤー
使った工具一式

パーツの一覧と、系統ごとの進み具合は YZF-R3カスタム にまとめています。