YZF-R3 ラピッドバイク EVO(サブコン移植と車種チェンジ)

ラピッドバイク EVO(RAPiD BIKE EVO)は、純正 ECU とインジェクターの間に割り込んで噴射の信号を書き換えるサブコンです。イタリアの DIMSPORT 製で、国内の総販売元は JAM PSD です。YZF-R25 で使っていた本体を、車種チェンジで YZF-R3 用に書き換えて移しました。

書き換えから戻ってきたラピッドバイク EVO の本体と、分岐が枝分かれした車種専用ハーネス一式

車種チェンジは税込17,930円、本体だけを送る

本体には車種ごとのプログラムが書かれています。JAM PSD が、この中身を別の車種用に書き換える車種チェンジサービスを受け付けています。

2026年6月に公式サイトの問い合わせフォームから連絡しました。伝えたのは、乗り換え前後の車種と年式(YZF-R25 2017年式 から YZF-R3 2017年式)、本体の ECU ナンバー、キットナンバーの EVO-R25-118A です。

項目金額
車種チェンジ15,000円(税別)
返送費700円
代引手数料600円
税込合計17,930円

返信で案内されたのは、本体を JAM PSD へ直送する手順でした。変更後のモデルと年式を書いたメモ、返送先の住所・氏名・電話番号を同梱し、品目は「RAPIDBIKE 車種チェンジ」とします。メモの書式は指定がありません。

ハーネスは買い足していません。取付要領書 MANUAL-339 は Yamaha YZF R25 14-16 と Yamaha YZF R3 15-18 を1冊で扱っていて、配線側は最初から兄弟車の両方に対応しています。キット一式の定価は81,500円(税別)です。

※ 定価は RAPiD BIKE JAPAN の価格表(2026年版・PDF)の EVO コンプリートキット(シングル〜8インジェクターモデル)による

割り込みは4系統、T.P.S. だけ分岐、アースはバッテリー

取り付けは、タンク・エアクリーナーボックス脱着で外した状態から始めました。

接続先純正側のカプラー位置つなぎ方
インジェクター灰と茶の2ピンフューエルタンクの下割り込み
クランクシャフトセンサー白の2ピン車体左側割り込み
T.P.S.(スロットルポジションセンサー)黒の5ピン車体右側・フューエルタンクの下黄色い線に分岐
電源黒の2ピン(リアブレーキスイッチ)車体右側・リアショックの近く割り込み
O2センサー黒の4ピンクーラントのリザーバータンクの奥割り込み
アース—バッテリーのマイナス端子丸端子

インジェクターは左右で線の色が決まっています。赤と緑の線が1番(左)、白と黒の線が2番(右)です。

電源を割り込ませたリアブレーキスイッチのカプラーは、茶色の線がキーOFFで0V、キーONで13.2Vです。ほかの場所と線の色はアクセサリー電源の取り出し場所にあります。

ハーネスにはこのほかに、クイックシフターセンサーの黒3ピン、ハンドルバーのマップスイッチの黒2ピン、CAN Bus インターフェースの白3ピン、USB インターフェースの白4ピンが出ています。今回つないだのは USB だけです。

純正側のカプラーに手書きのラベルを貼ってから外す

ラピッドバイクのハーネスは、枝分かれした1本ずつに CRANK SENSOR、O2 SENSOR、TPS、+12 SUPPLY のラベルが付いています。純正側には何も書かれていないので、外す前に白いテープを巻いて同じ名前を書きました。どのカプラーに何をつなぐかを確実にするためです。

スロットルボディ上の2本のインジェクターカプラーに、INJECTOR1とINJECTOR2と書いた白いテープを巻いた状態
インジェクターは1番と2番を書き分ける
茶と灰の純正インジェクターカプラーに、ラピッドバイクの黒いカプラーをつないだ状態
割り込ませたインジェクター側
フレーム内を走る純正ハーネスの白いカプラー群に、CRANK SENSORと書いた白いテープを巻いた状態
クランクシャフトセンサーは車体左側
CRANK SENSORと印字されたラピッドバイクの黒いチューブと、割り込ませた白い2ピンカプラーを手に持った状態
黒いチューブ側がラピッドバイクの印字ラベル
リアショックのスプリング横にある黒い2ピンカプラーと、+12 SUPPLYと書いた白いテープ
電源はリアブレーキスイッチから取る
バッテリーの右横で、青と赤の線が出た白いカプラーを純正の黒いカプラーに割り込ませた状態
割り込ませた電源側

O2センサーはリザーバータンクの奥、ロックはドライバーで押し開ける

O2センサーのカプラーは、クーラントのリザーバータンクの奥にあります。リザーバータンクは外して、キャッチタンクを付けています。カプラーはロックのツメが指では外れず、精密マイナスドライバーの先を差し込んで押し開けました。

エンジン後方を横切る純正ハーネスの黒い4ピンカプラーに、O2 SENSORと書いた白いテープを巻いた状態
リザーバータンクの奥にある黒の4ピン
O2センサーの黒い4ピンカプラーのロックに、精密マイナスドライバーの先を差し込んでいるところ
ロックのツメはドライバーで押し開ける
O2 SENSORと印字されたラピッドバイクのカプラーを、純正の4ピンカプラーに割り込ませた状態
割り込ませたO2センサー側

T.P.S.(スロットルポジションセンサー)は純正の黄色い線に赤いポジタップで分岐する

T.P.S. だけはカプラーの割り込みではありません。ラピッドバイクから出ている緑の線を、純正の黒い5ピンカプラーから出る黄色い線につなぎます。

付属する赤いポジタップは、線を切らずに分岐を作る部品です。線を溝に通してキャップを締めると、内側の針が被覆を貫いて芯線に触れます。分岐する側の線は被覆を剥いて反対側の穴に差し込み、そちらのキャップも締めます。

TPSと印字されたラピッドバイクの配線と、純正の黒い5ピンカプラーを並べて手に持った状態
純正は黒の5ピン。緑の線をここへ分岐させる
純正5ピンカプラーから出る黄色い線に、白い樹脂のポジタップ本体をかぶせたところ
黄色い線をポジタップの溝に通す
ポジタップの赤いキャップを外したところ。内側から出た針が見えている
キャップを締めると針が被覆を貫く
KNIPEXの圧着ペンチで、ラピッドバイクの緑の線の被覆を剥いているところ
分岐する緑の線は被覆を剥く
緑の線を差し込んだ側の赤いキャップを締めて、ポジタップでの分岐が仕上がった状態
緑の線側のキャップも締める
ポジタップで分岐を作ったあと、純正の黒い5ピンカプラーをスロットルボディ側に戻した状態
カプラーを元どおり戻して終わり

ラピッドバイク本体は純正ECUの下に収める

丸端子をバッテリーのマイナス端子に共締めし、ハーネスを本体につないでシート下のフレーム内に置きました。留め具では固定せず、置いたままです。本体は防水なので、袋やカバーにも入れていません。

リチウムバッテリーのマイナス端子に、ラピッドバイクの丸端子を真鍮のターミナルと共締めしているところ
丸端子はバッテリーのマイナス端子へ共締め
シート下のフレーム内に収まったラピッドバイク EVO の本体。上には純正ECUが並ぶ
純正ECUの下に本体が入る
作業を終えたYZF-R3を後方から見たところ。エアクリーナーボックスを外したスロットルボディまわりに配線が通っている
配線を終えたスロットルボディまわり

車種名が YAMAHA R3 2015 に変わっている

エアクリーナーボックスを外したまま、USB ケーブルで PC をつなぎ、Rapid Bike Master FREE を起動して EVO を選びます。画面下のステータスバーに、モジュールの種類・バッテリー電圧・ファームウェアのバージョン・車種名・シリアルが並びます。

表示は Rapid Bike EVO、13.3V、1.0.69、YAMAHA R3 2015 でした。本体が R25 用のままか R3 用かは、この車種名表記で確認できます。

表示の 2015 は車体の年式と違いますが、適合車種の年式は YZF R3 15-18 で、2017年式も含まれます。

Rapid Bike MasterのStatus画面。バッテリー13.3V、USB 5.00V、CPU +32℃、メインボード +26℃、T.P.S. 0.68V。画面下のステータスバーに YAMAHA R3 2015 と表示されている
Status 画面
項目表示
バッテリー電圧13.3V
USB の 5V5.00V
CPU 温度+32℃
メインボード温度+26℃
T.P.S.0.68V
Switch Gear4.49V
Switch Maps4.98V
Gear IN0.00V
O2 Sensor IN0.00V

スロットル開度を読む T.P.S. は 0.69V から 4.18V まで動く

Maps 画面の左上に、スロットル開度と T.P.S. の電圧が出ます。グリップを閉じた位置から止まるところまで回すと、0%(0.69V)から 100%(4.18V)へ変わりました。ここが動かなければ、緑の線の分岐が取れていないことになります。

Rapid Bike MasterのMaps画面。スロットルを開いた状態でT.P.S.が100%、電圧が4.18Vを示している
開度100%のときのT.P.S.

スロットルのキャリブレーションはエンジンを暖機してから行う手順で、まだ実施していません。

入っていたのは leovince full exhaust という名前のマップ

書き換えから戻ってきた本体には、マップが1つ入っていました。名前は leovince full exhaust です。

Rapid Bike MasterのMaps画面。leovince full exhaustという名前のインジェクションマップが、数値テーブルと3Dグラフで表示されている
初期マップ。左が数値、右が3Dグラフ

回転数は1500rpm から13000rpm までの40行、スロットル開度は 0・5・10・20・40・60・80・95% の8列です。0% の列は全行が0で、補正値は3600rpm・開度10% の +21 から、11700rpm と12000rpm の開度80% の -18 までです。3Dグラフで見ると、中回転に起伏が集まり、10000rpm を超えたあたりから下へ振れます。

自動適応(AUTO ADAPTIVE)の画面には、O2SENS が +45、補正を始める回転数が2000rpm、補正幅の上限が +15 と -15 で入っていました。補正マップの中身は全セルが0です。

Rapid Bike MasterのAuto Adaptivity画面。O2SENS +45、Start Correction 2000rpm、Max Enrichment Trim +15、Max Enleanment Trim -15、補正マップは全セル0
自動適応の設定と、まだ0のままの補正マップ

自動適応は、走行中に純正のO2センサーが返すラムダ値を読んで、メインのマップとは別に補正を足していく機能です。メーカーはこの設定値が二次エア未キャンセル・マフラー・フィルターの条件で変わると案内しています。R3 は二次エアをキャンセルし、吸気はKSPP のエアファンネルとデイトナのエアフィルターに替えてあります。マフラーは、YZF-R25 で使っていた ARROW のフルエキゾーストに替えました。

このマップを出発点にしてセッティングを進めます。

毎回の走行後に、自動反映されたマップを保存します。

※ 自動適応と防水の説明は RAPiD BIKE JAPAN の RAPID BIKE EVO 製品ページによる

使った工具

使った工具。KNIPEXの圧着ペンチ 97 21 215 B、ラチェットドライバー、緑の柄の精密マイナスドライバー
使った工具一式

KNIPEX の圧着ペンチ(97 21 215 B)は緑の線の被覆を剥くのに、精密マイナスドライバーは O2センサーのカプラーのロックを外すのに使いました。ラチェットドライバーはバッテリー端子のボルトです。

JP-SPORT 規則 7-3-20-3 がサブコンの追加を認めている

装備の基準として参考にしている MFJ 国内競技規則 2026年度 付則11「JP-SPORT技術仕様」は、フュエルインジェクションの節でサブコンを名指しして扱っています。

ECU(エンジンコントロールユニット)は内部のプログラムおよびデータを含めユニットの変更および交換が認められる。サブコンピューターの取り付け、追加も認められる。

・サブコンピューターの取り付け、追加も認められが、サブコンピューターを追加する場合は、公認車両(レースベース車用レース専用を除く)のECUとの併用のみが許可される。

ラピッドバイク EVO は純正 ECU を残したまま、その出力に割り込んで信号を書き換えるアドオンです。純正 ECU との併用という条件をそのまま満たします。同条の後段はトラクションコントロール用の別体 ECU を禁じる内容で、この機能を持たない EVO には掛かりません。

7-3-20-1 はスロットルボディとインジェクター本体に公認車両の状態を保つよう求めていますが、EVO が触るのは噴射の信号だけで、部品そのものは純正のままです。配線の割り込みが当たる 7-3-22 の扱いはプラズマブースターの規則7-3-22に書いています。ほかの部品に条文がどう当たるかはYZF-R3カスタムの規則一覧に、燃調まわりのほかの記事は吸気・燃調・点火系の記事一覧にまとめています。

※ 条文は MFJ 国内競技規則 2026 付則11 JP-SPORT技術仕様(PDF)を参照。引用は原文のまま