YZF-R3 冷却水交換とサーモスタット・ラジエターファンの撤去

サーキット走行の準備として、YZF-R3 のラジエターファンとサーモスタットを外し、ラジエターキャップを DRC の 1.6kgf/cm² に替え、KOSO の水温計で水温管理します。冷却水は elf RACING COOLANT ORGANIC に入れ替えます。

冷却水のリザーバータンクは撤去済みで、ラジエターキャップのオーバーフローはキャッチタンクへつないであります。

YZF-R3 の車体左側から見たラジエター。フレームのパイプの奥にラジエターのコアが見え、裏にあったファンは外してある
使う部品を並べたところ。elf RACING COOLANT ORGANIC の2L缶、デイトナの電源取出ハーネス 99818、赤いサーモスタットキャンセル、KOSO の水温計、DRC のラジエターキャップ
使う部品

冷却系の条文(5-6・7-3-16-6・7-3-16-8・7-4-4)

装備の基準として参考にしている JP-SPORT の技術仕様のうち、作業に当たる条文は次の4つです。

対象条文条文の内容
冷却水5-6水(レース用として一般市販されている冷却水を含む)に限られる。不凍液の成分が含まれる冷却水は使用できない。
サーモスタット7-3-16-6サーモスタットの交換・取り外しとスペーサーへの変更は認められる
水温計7-3-16-8水温計(センサー含む)の追加および変更が認められる
ラジエターファン7-4-4取り外すことができる部品(アフターマーケット部品との交換は不可)にラジエターファンと配線を挙げる

7-3-16 はラジエターオーバーフローパイプのキャッチタンク(7-3-16-7)も扱っていて、そちらはキャッチタンクの記事の条文の節に書いています。ほかの部品の条文は YZF-R3カスタムの規則一覧にあります。

※ 条文は MFJ 国内競技規則 2026 付則11 JP-SPORT技術仕様(PDF)による

ラジエターファンを撤去し、7.5A のファンヒューズを抜く

ファンは、走行風が当たらない停車中にラジエターへ風を通すためのものです。サーキットでは走っているあいだ走行風が当たるので、外します。ファンはラジエターの裏にボルト3本で留まっていて、冷却水を抜く前に外せます。

フレームの脇で、ラジエターファンの黒いカプラーを指でつまんで外しているところ
ファンのカプラーを抜く

カプラーを抜いたら、ラジエターの左右のボルト(10mm)を抜き、前へずらします。上側はステーがグロメットに差し込んであるだけなので、引き抜いておくと作業しやすくなります。

ラジエター側面の下にある固定ボルト
左右同じ位置にあるラジエターの固定ボルト
固定ボルトを抜き、ホースがつながったまま前へずらしたラジエター
ホースはつないだまま前へ
ラジエター上側の固定。ステーがゴムのグロメットに差し込まれている
上側のステーとグロメット

ファンのボルトは、上側を 10mm のディープソケット、下側の2本を 10mm のギアレンチで外します。

ラジエター裏のファンの上側のボルトに、10mm のディープソケットを掛けているところ
上側のボルトは 10mm のディープソケットで
ラジエター裏のファンの下側のボルトに、10mm のギアレンチを掛けているところ
下側のボルトは 10mm のギアレンチで
ファンを外したあとのラジエター
ファンを外したラジエター

外したファン(ブロワーアセンブリ 2MS-E2405-00)は 558.0g でした。

※ 部品名・品番は純正パーツカタログ(YZF-R3A/YZF-R3 ABS B02N)による

外したラジエターファンをキッチンスケールに載せたところ。表示は 558.0g
外したファンは 558.0g

ラジエターは、上側のステーをグロメットに掛けてから、車体左側の固定ボルトから締めて戻します。反対側から締めると、ラジエターが押し出されて、上側のステーがグロメットから抜けることがあります。ボルトは 10N·m です(締め付けトルク一覧の冷却系)。

ファン専用の 7.5A ヒューズも抜きます。抜いておくと、車体側に残ったカプラーに通電されなくなります。ヒューズボックス1は車体の右側で、センターカバーとライダーシートを外すとアクセスできます(タンデムシート・センターカバー・ライダーシートの取り外し)。FAN は右の列のいちばん下です。

ヒューズボックス1。7.5A と 15A のミニ平型ヒューズが並び、右の列の3段目と最下段が空いている
FAN の 7.5A を抜いたヒューズボックス1
ヒューズボックスのふたの裏のラベル。IGN 15A・SIGNAL 7.5A・ABS 7.5A・BACK_UP 7.5A・HEAD 15A・FAN 7.5A と予備の位置が書かれている
ふたの裏のラベル

この状態でエンジンをかけても、エンジン警告灯は点かず、メーターにエラーコードも出ませんでした。

冷却水を抜く(ドレンボルト M6・二面幅 8mm)

作業はエンジンが冷えてから始めます。ドレンボルトを抜くとポタポタと垂れ始め、ラジエターキャップを外すと勢いよく抜けます。

エンジン下側のカバーにある冷却水ドレンボルト。下に受け皿を置いている
冷却水ドレンボルトの位置
ドレンボルトに 8mm のギアレンチを掛けて緩めているところ
8mm のギアレンチで緩める
ラジエターキャップを外しているところ。フィラーネックの横のニップルにオレンジのオーバーフローホースが付いている
ラジエターキャップを外す
ドレンボルトの穴から受け皿へ流れ落ちる緑色の冷却水
受け皿へ抜ける冷却水

抜いた冷却水は、排水口や地面に流さず、ガソリンスタンドや販売店に廃棄を依頼します。

サーモスタットを撤去して K&T YR0700 に置き換える

サーモスタットカバーのボルト2本(8mm)を外し、カバーを手前に引いてサーモスタットを抜きます。

ラジエターホースがつながったサーモスタットカバーのボルトを、レンチで緩めているところ
サーモスタットカバーのボルトを外す
ホースごと手前に引いたサーモスタットカバーとサーモスタット
カバーを引いてサーモスタットを抜く
外した純正のサーモスタット。黒いゴムのフランジの下にばねと真鍮色の感温部がある
外した純正のサーモスタット

純正のサーモスタット(5P0-12411-00)は 80.5〜83.5℃ で開き始め、95.0℃ でリフト 3.0mm まで開きます。水温が上がるサーキットの走行中は開いたままなので、温度を調整する場面がありません。外せば、弁が開かなくなる故障も起きません。

※ 開弁温度とリフトはサービスマニュアルによる

代わりに、YZF-R25 から移植した K&T のサーモスタットキャンセルを入れます。エンジンとカバーのあいだに挟むスペーサーで、弁が無いので、冷却水は温度に関係なくラジエターへ流れます。

項目内容
メーカー有限会社ケーアンドティ(K&T)
商品名・商品番号サーモスタットキャンセル YR0700
材質アルミ
厚さ12mm(実測)
付属O リング、サーモスタットカバー用の長いボルト2本
価格5,720円(税込、2026年9月時点)

キャンセルには、先に KOSO の水温センサーを締め込んでおきます(次の節)。厚みが増えるので、カバーは付属の長いボルト(5mm の六角)で留め、10N·m で締めます。

赤いサーモスタットキャンセルを上から見たところ。O リングがはまり、側面のポートに水温センサーがねじ込まれている
O リングと水温センサー用のポート
サーモスタットキャンセルに通した付属の長いボルト2本と、KOSO の水温センサー、シールテープ
付属の長いボルト2本
エンジンとカバーのあいだに赤いキャンセルを挟み、カバーのボルトをトルクレンチで締めているところ
カバーのボルトを 10N·m で締める
組み付けた赤いキャンセルに直尺を当てたところ。厚さは 12mm
キャンセルの厚さは 12mm

KOSO の水温計(KS-M-TB)を取り付ける(センサーはサーモスタットキャンセル、電源はポジションランプ)

純正メーターの水温計は目盛りだけで何℃か読めないので、止まっているあいだの水温を KOSO の水温計で数字で確認します。

項目内容
製品名KOSO スーパースリムスタイルメーター 温度計(ブルー表示)
品番KS-M-TB(国内の輸入元 KN企画の品番)/BA024B10(KOSO の品番)
表示範囲0〜120℃(1℃刻み)
警告120℃を超えると表示が点滅
電源DC12V
センサーのねじPT1/8

※ 表示範囲・センサーのねじは KOSO の製品ページ、1℃刻み・点滅・電源は KN企画の商品ページ(2026年10月時点)による

センサーは、ねじにシールテープを巻いて、キャンセルの側面のポートへ 12mm のレンチで締め込みます。線はフレームに沿わせ、タイラップで留めます。

KOSO の真鍮の水温センサー。ねじ山に白いシールテープを巻いてある
センサーのねじにシールテープ
エンジンとサーモスタットカバーのあいだの赤いキャンセル。側面に真鍮の水温センサーが入り、黒い編組の線が出ている
キャンセルに入れた水温センサー
フレームに沿わせてタイラップで留めた水温センサーの線
線はフレームに沿わせる

電源はポジションランプの2極カプラーから取ります。デイトナの電源取出ハーネス 99818 に KOSO の電源線をつなぎ、カプラーに挿します。カプラーの位置と線の色はアクセサリー電源の取り出し場所にまとめています。

デイトナ 99818 の台紙と、KOSO の電源線をつないだ電源取出ハーネス
KOSO の電源線をつないだ 99818
メーターの下でハーネスから出ているポジションランプの2極カプラーと、挿し込む前の電源取出ハーネスのカプラー
ポジションランプの2極カプラー

本体は、コニ・ビオラのステンレスステー SS-92(SUS304・板厚 0.8mm)で純正メーターの上に留めます。手で曲げられるので、角度を合わせられます。

車体の前から見た純正メーターの裏。ステンレスのステーで KOSO の本体を上に留め、配線をタイラップでまとめている
メーター裏のステーと配線
純正メーターの上に載せた KOSO の水温計。キーを ON にして青い数字で 24 と表示している
純正メーターの上の KOSO

ラジエターキャップを 1.1 から DRC の 1.6kgf/cm² へ交換する

純正のキャップ(5ST-E2462-00)の刻印は 1.1 で、開弁圧は 108.0〜137.4kPa(1.08〜1.37kgf/cm²)です。

※ 開弁圧はサービスマニュアルによる

純正のラジエターキャップ。1.1 の刻印と警告ラベルがあり、横からオレンジのオーバーフローホースが出ている
刻印 1.1 の純正キャップ
項目内容
ブランドDRC(ダートフリーク)
品番D47-31-017(G5051)
開弁圧1.6kgf/cm²
価格1,430円(税込)

※ ダートフリークの製品ページ(2026年9月時点)による

沸点に余裕を持たせるため、開弁圧を上げます。ダートフリークは、1.6kgf/cm² で水の沸点が約130℃になり、1.1kgf/cm² より約8℃上がると説明しています。

フィラーネックに付けた DRC の黒いラジエターキャップ。1.6kgf/cm² と 156kPa の表記がある
DRC の 1.6kgf/cm²

elf RACING COOLANT ORGANIC を入れてエア抜きする(冷却水容量 0.96L)

5-6 が不凍液の成分を含む冷却水を認めていないので、冷却水は elf のレーシングクーラントにします。希釈せずに入れます。

項目内容
メーカーエルフ(elf)
製品名・品番RACING COOLANT ORGANIC 208470
容量2L
成分純水ベース(エチレングリコール・プロピレングリコールを含まない)
凍結温度−1℃

※ 製品名・容量・成分・凍結温度は elf の製品ページ(2026年9月時点)による

入れる前に、ドレンボルトのガスケットを新品(90430-06014)に替えて、10N·m で締めます。

ドレンボルトと銅のガスケット2枚。上が外した古いガスケット、下が新品
上が古いガスケット、下が新品
エンジン下側のカバーのドレンボルトを、トルクレンチで締めているところ
ドレンボルトを 10N·m で締める

冷却水の量は、取扱説明書ではラジエターと全ての経路で 0.96L です。フィラーネックから入れ、車体を左右に傾けながら補充して、エアを抜きます。

フィラーネックに差したじょうごへ、elf RACING COOLANT ORGANIC の2L缶から注いでいるところ
じょうごで elf を入れる

エアがほとんど抜けたら、キャップを外したままエンジンをかけて暖機します。かけた直後にフィラーネックへ大きな気泡が上がり、水位が少し下がったので、その分を補充しました。

エンジンをかけたあとのフィラーネック。冷却水の表面に気泡が浮いている
エンジンをかけると気泡が上がる

KOSO の表示は 25℃ から約3分半で 70℃ になり、そこでエンジンを止めました。ファンが無いので、停車したままのアイドリングでは、それ以上は上げません。

暖機を始めたころの純正メーターと KOSO の水温計。KOSO の表示は 25
暖機を始めたころは 25℃
暖機を止めたときの純正メーターと KOSO の水温計。KOSO の表示は 70
約3分半で 70℃

水位は温度とともにやや上がりました。

暖機を止めたときのフィラーネック。細かい気泡が浮き、水位がネックの上のほうまで来ている
温度とともに上がった水位

エンジンを止めたら、そのまま DRC のキャップを閉めます。

この車両を置いている場所は室温が −1℃ まで下がらないので、冬も抜かずに保管します。

使った工具

トレーに並べた工具。上から南海部品のトルクレンチ、KTC の電動ラチェット、スナップオンのラチェット、ネプロスの 12mm コンビネーションレンチ、SIGNET のギアレンチ2本。左にソケット3個と六角のビットソケット
使った工具