YZF-R3 リアサスペンション交換(オーリンズ YA 467)

YZF-R3 のカスタム記録のうち、足まわりです。純正のリアサスペンションを、YZF-R25 で使っていた OHLINS へ交換します。

YZF-R3に取り付けたOHLINSのリアサスペンションを左後方から。金色のスプリングとリザーバータンク

OHLINS リアショックアブソーバー(YA 467)

YZF-R25/YZF-R3 用のオーリンズです。適合コードは YA 467。オーバーホールと仕様変更は、オーリンズの国内正規代理店であり認定サービスセンターでもある G sense(ジーセンス)に依頼してきました。

YZF-R3へ移植する前のOHLINSリアショックアブソーバー単体。金色のスプリングと編み込みホースでつながる金色のリザーバータンク
移植前の単体。ホースの先がリザーバータンク
OHLINS付属の取扱説明書のフッター部分。Part no. MI_YA467_EN_0 の印字
付属の説明書に印字された YA467 の表記
項目内容
メーカーOHLINS(オーリンズ)
適合コードYA 467(YZF-R25/YZF-R3)
Type記号S46HR1C1L(後継 STX46 の記号)
ピストン径46mm
全長277mm(+10/-0)
ストローク46mm
スプリング品番61104-69
スプリング自由長130mm
オーバーホール・仕様変更株式会社G sense(神奈川県横浜市港南区)

※ 全長・ストローク・スプリング品番・自由長・ロックナットの締付トルクは製品付属の説明書にもとづく。製品情報は OHLINS の製品ページ(掲載品は YA 467 の後継)、国内の取り扱いは ラボ・カロッツェリアのS46リアショックアブソーバー、オーバーホールは G sense を参照

後継 STX46 の Type記号 S46HR1C1L が示す構成

本体に型式のステッカーはありません。オーリンズ本国サイトが YA 467 の後継として掲げる STX46 の Type記号が S46HR1C1L で、一文字ずつが構造と機能を表しています。実物の構成もこのとおりです。

記号意味
Sシングルチューブ構造
46ピストン径 46mm
Hホースで連結したリザーバータンク
R1リバウンド(伸び側)減衰力の調整機能
C1コンプレッション(圧側)減衰力の調整機能
L全長を伸縮させる車高調整機能

※ 記号の意味は オーリンズ 二輪車製品Type記号による

調整箇所は4つです。スプリングプリロードが本体上部のロックリング、圧側減衰がリザーバータンク上面の黒いノブ、伸び側減衰がロッド下端、全長がロッドエンドのねじ込み量です。

全長を変えたあとは、ロックナットを 40N·m で締め直します。ねじ込み量の上限は、ロックナットの下から溝が完全に見える位置です。

140N/mm ではサーキットに柔らかすぎた

このショックには標準で 140N/mm のスプリングが付いています。R25 でサーキットを走らせるとこれが柔らかく、荷重をかけたときに沈み込みが止まりませんでした。

G sense で 180N/mm のスプリングに組み替えたのが最初の仕様変更です。

180N/mmのスプリングに組み替えた直後のOHLINSリアショックアブソーバー単体。スプリングにG senseのロゴが入っている
スプリングには G sense のロゴが入る

そのあと 190N/mm へ上げ、あわせて減衰の仕様変更・ストローク量を増やす加工・全長を変える加工も試しました。全長は、本体の車高調整機構で動かせる範囲を超えて変えています。ただし 190N/mm は硬すぎたので、減衰・ストローク・全長の仕様変更はそのままに、スプリングだけ 180N/mm へ戻しました。

外した190N/mmのスプリング(黄色)と、組み込む180N/mmのスプリング(金色)を並べた比較。奥にYZF-R25の車体
190N/mm(黄色)から 180N/mm(金色)へ戻す

R3 へ移すのは、この仕様変更済み・180N/mm の状態です。車体はR25とR3で共通なので、そのまま載せ替えられます。

純正のチェーンガードは戻さない

純正のチェーンガードは、ショックの脱着で手が入らなくなるため外しました。

作業前のYZF-R3を左後方から。スイングアームの上に純正のチェーンガードが付いた状態
作業前。純正のチェーンガードが付いている
純正のチェーンガードを外したYZF-R3を左後方から。スイングアーム上面とドライブチェーンが露出している
外したあと。スイングアーム上面が出る

規則が装着を求めているのはリアスプロケットガード(7-2-6-1/7-2-6-2)とフロントスプロケットガード(7-2-6-3)です。どちらもチェーンとスプロケットの噛み合い部を対象にした条文で、スイングアーム上の純正チェーンガードはこれに当たりません。リアスプロケットガードは A-TECH のドライブチェーンガードを付けています。

ショックを外すと車体が落ちる

YZF-R25/R3 のリアサスペンションはリンクを持たない構造で、ショックは上側のナットと下側のボルトの2箇所だけで車体に留まります。リアスタンドで上げた状態では、車体の重さはリアショックを通してスイングアームに乗っています。ショックを外すとフレームを支えるものがなくなり、車体が落ちます。

そこでフレームを上から吊ってからショックを外します。使ったのは UNIT のフレームスタンド(品番 D6499、メーカー品番 UN-C1010)です。吊り下げ高は 1700mm/1800mm/1900mm の3段階、耐荷重は 180kg です。上のビームにチェーンブロックを掛け、そこからフレームを吊り上げます。

UNITのフレームスタンドをYZF-R3にまたがせ、上のビームからチェーンブロックを吊り下げた状態を前方から
フレームスタンドのビームにチェーンブロックを掛ける
チェーンブロックのフックに掛けたベルトを、シートレールの下のフレームに回して吊り上げているところ
吊り点。ベルトをフレームに回して掛ける

メーカーは車両全体を吊り下げる使い方を認めていません。フロントスタンドかリアスタンド、センタースタンドで持ち上げてから使うのが前提なので、リアスタンドに掛けたままフレーム側だけを吊り上げます。

項目内容
ブランドUNIT(取扱:ダートフリーク)
製品名フレームスタンド
品番D6499(メーカー品番 UN-C1010)
吊り下げ高1700mm/1800mm/1900mm の3段階
耐荷重180kg
サイズ奥行 50 × 幅 108 × 高さ 最大200cm
重量15.2kg

※ 品番・仕様・注意事項はメーカーの商品説明にもとづく。製品情報は ダートフリークの商品ページを参照

純正リアショックの外し方(上側ナット・下側ボルト)

上側のナットはサイドパネル(リヤサイドカウリング)の内側にあります。外し方は YZF-R3/R25 テールカウルの外し方 にまとめています。

上側はナットをメガネレンチで押さえながら、反対側からボルトを回して抜きます。下側のボルトは右側から、エクステンションバーを継いだラチェットで回します。

リヤショックアブソーバーAss'yナット(上側)をメガネレンチで押さえ、反対側からラチェットでボルトを回しているところ
上側。ナットを押さえてボルトを回す
車体右側から、エクステンションバーを継いだラチェットでリヤショックアブソーバーAss'yボルト(下側)を回しているところ
下側。右側からエクステンションバーを継いで回す
ボルトを抜いた純正リアショックアブソーバーを手で引き出しているところ。ダンパーボディにKYBの刻印がある
純正を引き出す。ダンパーは KYB 製
リアショックアブソーバーを外したYZF-R3を左後方から。ショックがあった場所の奥にABSユニットが見えている
外したあと。奥に ABS ユニットが見える

純正は上下ともアイ型のマウントですが、OHLINS は下側がロッドエンドで、その上のロックナットが全長調整を受け持ちます。

外した純正リアショックアブソーバー(左・黄色いスプリング)と、取り付けるOHLINS(右・金色のスプリングとホース付きリザーバータンク)を並べた比較
左が純正、右が OHLINS

ボルトは上側から入れ、締め付けは上下とも 58N·m

上側を通してショックがぶら下がる状態にしてから、下側へ移ります。

OHLINSのリアショックアブソーバーを上から車体に差し込み、手で支えているところ。下側のロッドエンドはまだ固定されていない
上から差し込む。下側はまだ浮いている

下側のボルトは、吊っている車体を上げ下げしながら穴の位置を合わせます。フレームとスイングアームの相対位置が変わると穴の芯がずれるので、ボルトがすんなり通る高さを探ってから差し込みます。フレームスタンドで吊っているのは、この高さを自分で決められるようにするためでもあります。

ボルトを通す前に、スペーサーにベルハンマーゴールド グリース No.2 を塗ります。前後のアクスルシャフトに使っているものと同じです。

上側のナット、下側のボルトとも M12・58N·m、二面幅は 17mm です。

リヤショックアブソーバーAss'yナット(上側)をメガネレンチで押さえ、トルクレンチで締めているところ
上側のナットを 58N·m で締める
車体右側から、スタビレーのトルクレンチにエクステンションバーを継いでリヤショックアブソーバーAss'yボルト(下側)を締めているところ
下側のボルトも同じく 58N·m

58N·m はスタビレー(STAHLWILLE)のトルクレンチで掛けています。この2本を含むリア側の数値は 締め付けトルク一覧のスイングアーム・リアサスペンション に載せています。

リザーバータンクは左のタンデムステップの位置に留める

このショックはリザーバータンクがホースで別体になっているので、タンクを車体側に固定するブラケットが要ります。ブラケットはショックに付属します。取り付け先は左側のタンデムステップです。

JP-SPORT の技術仕様は「レースのために取り外さなければならない部品」を 7-1 に列挙していて、7-1-5 が同乗者用フットレスト/グラブレールです。レースに出るなら外すことが義務づけられている部品で、ブラケットの取り付け先はそのあとに空きます。

エクステンションバーを継いだラチェットで、左側のタンデムフットレストAss'yボルトを外しているところ
左のタンデムステップを外す
タンデムステップを外した位置に、リザーバータンクのブラケットをトルクレンチで固定しているところ
同じ位置にブラケットを留める
ブラケットのクランプバンドに収めたOHLINSのリザーバータンクを、六角レンチで締め込んで固定しているところ
クランプバンドでタンクを締める

ブラケットは、外したタンデムフットレストAss'y のボルトでそのまま留めます。人が乗るタンデムステップではないので、純正の締付トルクまでは掛けていません。純正値は 締め付けトルク一覧のエンジンマウント・ステップ・排気 に載せています。

取り付けを終えたYZF-R3を右後方から。フレームの間に金色のスプリングが見える
右側から。フレームの間に金色が見える

リアサスの脱着に使った工具

使った工具一式。スタビレーのトルクレンチ、スナップオンのラチェット、KTCの電動ラチェット、HAZETのT字ハンドル、KTCの17mmコンビネーションレンチ、ソケットとエクステンションバー
使った工具一式。上側はナットを押さえる工具と回す工具を同時に使う

7-3-4 はリアサスペンションの変更を認めている

装備の基準として参考にしている JP-SPORT の技術仕様は、リアサスペンションについて 7-3-4-1 で「リアサスペンション・ユニットは変更、または改造することができる。フレームとリアフォークのアタッチメントは車両公認時の状態に維持されなくてはならない。ただし、シム追加による車高調整は認められる」としています。さらに 7-3-4-2 は「リアサスペンションのスプリングおよびカラーは変更できる」と定めています。

ショック本体とスプリングは、アクスルシャフトやピボットシャフトが公認車両の状態の維持を求められているのとは扱いが違います。維持が求められるのはフレームとリアフォークの取り付け部で、ここは純正のまま使っています。もう1つ、7-3-4-3 がリアサスペンション・リンケージにも公認車両時の状態の維持を求めています。

リンクを持たない車体のため 7-3-4-3 は事実上関わりません。ほかの部品に条文がどう当たるかは YZF-R3カスタムの規則一覧にまとめています。

同じ足まわりの記事一覧は YZF-R3カスタム にまとめています。